うとうととして

古典を少しずつ読みます。

衛生警察とは?(『資本論 第1巻』各所)

 衛生警察とは?(『資本論 第1巻』各所)

 

 『資本論』に衛生警察ということばが出てきます。

 どういう権限があるのか中央政府直属なのか地方自治体ごとなのか、正体がわかりません。

  (以下、特に断らない限り、亀甲括弧〔 〕内はブログ主による。また、太字強調はブログ主による。)

 

〔ドクター・サイモンの報告書(1864年)から〕私の第4次報告書 〔1861年〕で示したように、労働者の第一の衛生権、すなわち、彼らの雇い主がどんな作業のために彼らを集めるにせよ、労働は、雇い主の力の及ぶ限り、いっさいの避けられうる非衛生的な事情から解放されているべきだ、という権利を主張することは労働者にとって実際には不可能である。私が指摘したように、労働者は、この衛生上の正義を自分で達成することが実際にできないかぎり、衛生警察当局から有効な援助を得ることはできない。・・・・・・いまや、無数の労働者と労働者の生命が、彼らの単なる就業が生み出す果てしない肉体的苦痛によって、いたずらにさいなまれ縮められるのである。(『資本論 第1巻』489頁、岡崎次郎訳。〔1861年〕はマルクスによる。)

                             

〔ドクター・サイモンの報告書(1864年)から。前略〕家庭は、最も安価に雨露がしのげる所にあるであろう。すなわち、衛生警察の効果の最もあがらない、排水が非常に悪く、往来の便が最も悪く、汚物の最も多い、給水が最小または最悪の地区に、そして都市では光線や空気の最も乏しい地区に、あるであろう。〔後略〕(『資本論 第1巻』686頁、岡崎次郎訳。)

 

〔前略〕産業の発達や資本の蓄積や都市の成長と「美化」とに伴って同じ勢いで弊害もまた大きくなってきたので、「名声」にたいしても遠慮しない伝染病にたいする恐怖だけからでも、1847 年から 1864 年までに10よりも少なくない衛生警察関係の法律が生み出され、また、リヴァプールグラスゴーなどのようないくつかの都市では、不安に駆られたブルジョアジーはそれぞれの市当局をつうじて干渉した。〔後略〕(『資本論 第1巻』687頁、岡崎次郎訳。)

 

〔前略〕従来ロンドンで行われたように不適格な家屋の取り払いによって労働者を一地区から追い出す衛生警察的処置は、すべて、彼らを別の一地区に密集させることにしか役立たないということは、自明である。〔後略〕(『資本論 第1巻』690頁、岡崎次郎訳。)

 

〔前略〕労働者は妻子や持ち物といっしょに街頭に投げ出され、そして――市当局が礼儀をやかましく言う地区にあまり大ぜいで押しかければ、そこでは衛生警察の名でいじめられるのだ!(『資本論 第1巻』690頁、岡崎次郎訳。)

 

 

「世論」やあるいはまた衛生警察とさえ衝突しても、資本は、自分が労働者の機能や彼の家庭生活に押しつける労働者をもっと有利に搾取するために必要だということによって危険でもあれば侮辱的でもある諸条件を「正当化する」ことを、少しもはばからない。〔後略〕(『資本論 第1巻』696頁、岡崎次郎訳。)

 

 

〔ドクター・サイモンの報告書(1865年)から。前略〕寝室が一つあるだけで、暖炉もなければ、便所もなく、開き窓もなく、堀のほかには給水設備もなければ庭もない腐りかかった小屋であっても、労働者はこの不法にたいしてどうすることもできない。そして、われわれの衛生警察法(The Nuisances Removal Acts)は、まったくの死文なのである。これらの法律の実施は、じつに、このような穴小屋を賃貸ししている家主自身に一任されているのである。〔後略〕(『資本論 第1巻』713-714頁、岡崎次郎訳。)

 

 エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』にも何箇所かに出てきます。

 『資本論 第1巻』、『イギリスにおける労働者階級の状態』の訳注には見つからず。また『全集』の事項索引に見つからず。