うとうととして

古典を少しずつ読みます。

非常にさまざまな種類の軽い模様つきの趣味品までが織られていた織物部では(ディーツ版23巻434頁)

これに反して、非常にさまざまな種類の軽い模様つきの趣味品までが織られていた織物部では、客体的な生産条件にはまったくなんの変化も起きなかった。(『1844年および1845年4月30日に終わる四半期の工場監督官報告書』を踏まえて記述した箇所。ディーツ版23巻434頁。岡崎次郎訳。)

趣味品:Phantasieartikel。

 

 趣味品とは何か。気になります。Phantasieということばについて、手元の独和辞典(『クラウン独和辞典第3版』)では、しっくりくる日本語の言葉が出てきません。

 マルクスが引いている 『1844年および1845年4月30日に終わる四半期の工場監督官報告書』の19頁に次の箇所あり。

 The quality of the yarn  spun varies from 36 to 130 hanks in the pound, and  great variety of light, figured, and fancy articles are woven.

 紡がれる糸の品質は1ポンドの綿あたり36かせから130かせにわたり、また、非常にさまざまな種類の軽い模様つきの趣味品までが織られていた。(前半はブログ主の訳、後半は岡崎次郎訳。太字強調はブログ主。)

(なお前半は1ポンドの繊維からどれだけの長さの糸をつくるかで糸の太さを示すやりかたがあるので、それで、この工場で作っている糸の太さがこれこれからこれこれまでです、と言っているようです。)

「ファンシー」というと小中学生のときのファンシーグッズ、つまりキキとララとか、マイメロディとか、けろけろけろっぴとか、そのほかかわいらしいものを思い浮かべます。

 英和辞典(『新クラウン英和辞典第3版』)を頼ると、fancyに装飾的な、という意味があります。そうすると、趣味品、とは、結局のところ、ここでは、装飾的な品、ということらしい。

 

[2024年6月17日追記] ディーツ版23巻436頁に、訳者註で、「かせ:hank=綿糸840ヤード」とあります。840ヤードはメートル法で768メートル。工場監督官報告書の引用箇所中の糸の太さを番手で表わすと36番手から130番手となります。

 太さが36番手から130番手にわたる、という言い方でなく、品質が36番手から130番手にわたる、という言い方をしているのは、細糸のほうが高級だからです。宮田美智也(1986)参照。

 

[参照した文献]

宮田美智也(1986)、産業革命期イギリス綿工業における商業信用の展開、金沢大学経済学部論集 7(1) :41-77.