うとうととして

古典を少しずつ読みます。

ほかのいろいろな物にたいする力手段として(資本論、ディーツ版194頁)

労働手段とは、労働者によって彼と労働対象とのあいだに入れられてこの対象への彼の働きかけの導体として彼のために役立つ物またはいろいろな物の複合体である。労働者は、いろいろな物の機械的、物理的、化学的な性質を利用して、それらのものを、彼の目的に応じて、ほかのいろいろな物にたいする力手段として作用させる。

 

 力手段とは何かしら。耳慣れないことばです。直前の文中の導体、あるいは働きかけの導体の言い換え、と言えそうです。力手段のもとのことばはMachtmittelです。Macht(マハト)は力、Mittel(ミッテル)の語義は手段、方法、方策。導体のもとのことばはLeiter(ライター)。「彼の働きかけの導体として」のもとのことばはals Leiter seiner Tätigkeit 。Tätigkeit(テーティヒカイト)の語義は活動、行動;作動、作用、働き;仕事。(語義はデイリーコンサイス独和辞典から。)

 「力手段」を「働きかけの導体」で置き換えてみると

「労働者は、いろいろな物の機械的、物理的、化学的な性質を利用して、それらのものを、働きかけの導体として使用し、彼の目的に応じて他の物体に作用させる。」

となり、すんなり読めます。

 Machtmittelのしっくりくる日本語を見つけるため、中国語版を参照しました。力手段は、中国語版では「発揮力量的手段」(の簡体字)となっています。Google翻訳すると「力を発揮する手段として」という訳が出てきます。ことばを置き換えるだけでなく構文も中国語版のGoogle訳を参考にすると

「労働者は、いろいろな物の機械的、物理的、化学的な性質を利用して、それらのものを、力を発揮する手段として使用し、彼の目的に応じて他の物体に作用させる。」

となります。十分しっくり来ます。